誰も居ない図書室へ続く道を、ハリーは1人で歩いていた
片手には、ハーマイオニーから頼まれた返却する本を握っている

ハリーは大きなため息をついた


ロンは明日着るドレスローブに悪戦苦闘していて
ハーマイオニーは女子寮に篭りっぱなし
よって、必然的にハリーが本を返すハメになってしまった

どこか理不尽な気がして、ハリーの気分が下がる
誰もいない廊下を孤独に歩いている事も、気分を下げる要因の一つだった



ギイィっと少しさび付いている扉を開けると、中は閑散とした雰囲気だった
チラホラと、パーティーに参加できない低学年の生徒達が課題をこなしている
なんだか暗い雰囲気が漂っているように思えた
ここだけ、クリスマスが排除されてしまっているのではないだろうか


ハリーは声には出さずに、心の中で二回目の大きなため息をついた
折角の楽しい気分が、全て暗く侵されていくような感触だった



とりあえず、ハリーは返却の手続きをする為に、司書用の机に向かう
いつもは生徒達の様子をギラギラした目つきで見ているマダム・ピンズがいない事が
唯一の幸いだった


ハリーはささっと返却を済ませてから辺りを見回すと、ふと見慣れた後姿が目に入った
肩辺りまで伸ばされた黒髪が、さらさらと揺れている

彼女がいたのはあまり人目につかないような場所で
自分が彼女を発見できた事が、ハリーにとって奇跡のようにも思えた

ハリーはそっと彼女に近付いた


「やぁ、リン」
「!?」


リンはびくっと肩を揺らした
ずっと気が付かなかった人の気配を背後に感じて、おそるおそる後ろを振り向いた
そして立っているのがハリーだと気付くと、ほっと息をついた


「ごめんね。驚かしちゃったみたいで」

「ううん、平気。ただ此処に知り合いが来るとは思ってなくて」

「僕もまさか此処にリンが居るなんて思ってなかったから、見つけた時は驚いたよ」


リンはふふっと笑い、時計を見る
そろそろ夕食の時間だと分かって、読んでいた本を閉じた
そして立ち上がり、本を片付けるために本棚へ向かう
でも元あった場所はリンにとっては高く、つま先立ちをしてもなかなか入らなかった
するとハリーはリンの手から本を取り、軽く背伸びをして本を入れた


「あ、ありがとう。ポッター君」

「僕のほうが、リンよりちょっとだけ大きいからね」


ニコっとリンに笑いかけて、ハリーはリンの手に目を向けた
そこにはまだ白い包帯が巻かれている
ハリーは眉をひそめて、言った


「その怪我、具合はどうなの?」

「え?あぁ、大丈夫だよ。痛くないし、傷だって消えてるの。
 ただ、一応付けておくように言われただけだから、本当は巻かなくても良いんだけどね」

「そっか、大丈夫なら良かったよ。リンも大変だったね。」

「ドラゴンほど大変じゃないよ。心配してくれてありがとう、ポッター君」


リンは優しくハリーに言った
ハリーは、少し照れくさそうに笑った


「じゃ、そろそろ夕食の時間だから、あたしは大広間に行くね。」

「あっ、僕も一緒に行くよ」


そう言うと、リンは自分が座っていた椅子を机の下に押し込み、ハリーの横に行く
そしてハリーに微笑みかけながら言った


「今日の夕飯はなんだろうね?」

「ドラゴン以外なら何でも良いけどね」


思わず、二人で笑った


---------------------------------------------------------------------------------------------
 包帯を巻かせているのは、ヒロインが他の男子生徒に
 ダンスパーティーに誘われない為の、先生の策略です。
 
 「怪我してんなら無理かー…」
 
 と思わせるように。