リンとハリーは、図書館から大広間へと向かっていた
夕食の時間が近いためか、大広間に近付くに連れて人通りが多くなっている
中には、二人が一緒に歩いてるのを興味深く見ていた生徒も居たけれど
二人ともそれほど気にはしなかった
他愛も無い話をしていて、突然ハリーが切り出した
「そういえばっ」
「え?どうしたの?」
「リンってさ、僕の事“ポッター君”って呼ぶよね?」
リンはハリーにそう言われて、初めて自分がリンと呼ばれている事に気が付いた
つい、あっと声を出してしまった
確か、最初は“シンジョウさん”だった事を思い出す
「うん、ずっとポッター君って呼んでる。
なんか自然すぎて分からなかったけど、あたしの事呼び捨てだったんだね」
小さな発見があって、リンは嬉しくて顔が緩んだ
だけど、ハリーの顔は申し訳なさそうに歪む
「ごめん、嫌だった?」
リンは慌てて首を振った
「そんな事無いよっ、呼び捨ての方が良いっ」
「そっか....なら良かった、」
ハリーはリンに安心したように微笑んだ
どこか嬉しそうな雰囲気を漂わせている
「それで、僕はリンにポッター君じゃなくて、ハリーって呼んで欲しいんだ」
「え?」
「ポッター君じゃよそよそしい感じがするんだ。僕等、友達になれないかな?」
リンはハリーの申し出につい呆然としてしまった
少しの沈黙が流れる
ハリーが緊張して自分の答えを待っているようで、リンは照れながら笑った
「えっと、じゃあ…、ハ、ハリー?」
リンの顔は、まるで真っ赤に熟したりんごの様に赤かったけれど
恥ずかしさを押し込めて、声を絞り出して言った
するとハリーはくしゃくしゃの髪を撫で付けながら、くすっと笑った
「なんだか、照れるもんだね」
「ふふっ、そうだね」
二人とも照れながら歩いているのが面白くて、笑ったまま大広間に着いた
リンはハッフルパフの席を見て、マリア達が居るのを見つけた
ハリーも暗い顔をしたロンを見つけたらしくて、はぁっとため息をついている
リンはハリーに向き合って、言った
「それじゃ、あたしハッフルパフの席に行くね」
「うん。あ、今度ロンやハーマイオニーに会ってよ。
ロンもこの前の事謝りたいと思っているんだ。」
「うん、分かった!じゃあ、またね」
「じゃあね」
そう言って二人は軽く手を振って、グリフィンドールとハッフルパフの席に行く
きっと、既に席についてる友達から、明日の話を散々されるんだなぁ、と思いながら
誰も居ない図書室へ続く道を、ハリーは1人で歩いていた
片手には、ハーマイオニーから頼まれた返却する本を握っている
ハリーは大きなため息をついた
ロンは明日着るドレスローブに悪戦苦闘していて
ハーマイオニーは女子寮に篭りっぱなし
よって、必然的にハリーが本を返すハメになってしまった
どこか理不尽な気がして、ハリーの気分が下がる
誰もいない廊下を孤独に歩いている事も、気分を下げる要因の一つだった
ギイィっと少しさび付いている扉を開けると、中は閑散とした雰囲気だった
チラホラと、パーティーに参加できない低学年の生徒達が課題をこなしている
なんだか暗い雰囲気が漂っているように思えた
ここだけ、クリスマスが排除されてしまっているのではないだろうか
ハリーは声には出さずに、心の中で二回目の大きなため息をついた
折角の楽しい気分が、全て暗く侵されていくような感触だった
とりあえず、ハリーは返却の手続きをする為に、司書用の机に向かう
いつもは生徒達の様子をギラギラした目つきで見ているマダム・ピンズがいない事が
唯一の幸いだった
ハリーはささっと返却を済ませてから辺りを見回すと、ふと見慣れた後姿が目に入った
肩辺りまで伸ばされた黒髪が、さらさらと揺れている
彼女がいたのはあまり人目につかないような場所で
自分が彼女を発見できた事が、ハリーにとって奇跡のようにも思えた
ハリーはそっと彼女に近付いた
「やぁ、リン」
「!?」
リンはびくっと肩を揺らした
ずっと気が付かなかった人の気配を背後に感じて、おそるおそる後ろを振り向いた
そして立っているのがハリーだと気付くと、ほっと息をついた
「ごめんね。驚かしちゃったみたいで」
「ううん、平気。ただ此処に知り合いが来るとは思ってなくて」
「僕もまさか此処にリンが居るなんて思ってなかったから、見つけた時は驚いたよ」
リンはふふっと笑い、時計を見る
そろそろ夕食の時間だと分かって、読んでいた本を閉じた
そして立ち上がり、本を片付けるために本棚へ向かう
でも元あった場所はリンにとっては高く、つま先立ちをしてもなかなか入らなかった
するとハリーはリンの手から本を取り、軽く背伸びをして本を入れた
「あ、ありがとう。ポッター君」
「僕のほうが、リンよりちょっとだけ大きいからね」
ニコっとリンに笑いかけて、ハリーはリンの手に目を向けた
そこにはまだ白い包帯が巻かれている
ハリーは眉をひそめて、言った
「その怪我、具合はどうなの?」
「え?あぁ、大丈夫だよ。痛くないし、傷だって消えてるの。
ただ、一応付けておくように言われただけだから、本当は巻かなくても良いんだけどね」
「そっか、大丈夫なら良かったよ。リンも大変だったね。」
「ドラゴンほど大変じゃないよ。心配してくれてありがとう、ポッター君」
リンは優しくハリーに言った
ハリーは、少し照れくさそうに笑った
「じゃ、そろそろ夕食の時間だから、あたしは大広間に行くね。」
「あっ、僕も一緒に行くよ」
そう言うと、リンは自分が座っていた椅子を机の下に押し込み、ハリーの横に行く
そしてハリーに微笑みかけながら言った
「今日の夕飯はなんだろうね?」
「ドラゴン以外なら何でも良いけどね」
思わず、二人で笑った
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包帯を巻かせているのは、ヒロインが他の男子生徒に
ダンスパーティーに誘われない為の、先生の策略です。
「怪我してんなら無理かー…」
と思わせるように。